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脱炭素社会のエネルギーの姿に
アンサーを。

プログラム・ディレクター(PD) 山本 章夫 名古屋大学 大学院工学研究科 
教授

日本は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しています。多くの課題が横たわる未来への道程において、日常生活や社会活動の維持に欠かせないエネルギーをどのように確保していくのかが大きな課題になっています。東京電力福島第一原子力発電所の事故で、原子力発電所に対する安全性や信頼性は大きく損なわれました。その反省と教訓の上に立ち、社会との対話を続けながら、脱炭素社会におけるエネルギー利用を、冷静かつ事実に基づいた議論の下、模索していく必要があります。

原子力工学は、物理学をはじめ、機械、電気、材料、応用化学、土木建築、情報処理など工学系の全分野に匹敵する広範な学術分野から構成される“総合工学”です。近年では、小型原子炉を始めとする革新的な原子力技術の創成に向け、国際的な最先端研究が繰り広げられる熱いフィールドでもあります。ANECでは、スケールメリットを生かした体系的な専門教育カリキュラムと実践的な講義・実習、国際ネットワークによる研鑽などを通じて、未来技術に挑む豊かな知性と探究する力、創造力、リーダーシップ、多様な価値観を受容する柔軟な感性を育んでいきます。未来社会と技術を架橋する挑戦的研究を志す、若き個性を待ち望んでいます。

原子力イノベーションを担う
若き可能性、ここから。

プログラム・オフィサー(PO) 黒﨑 健 京都大学 複合原子力科学研究所 
教授

原子力発電は、エネルギー自給率の低い日本において、安定的に電気を供給する基幹電源として、長らく役立てられてきた歴史があります。科学技術の多くは社会実装されることで光と影、リスクとベネフィットを帯びますが、原子力発電は「発電時にCO2を排出しない」「発電コストが安定している」という大きな利点を有しています。グローバルな課題として国際的な枠組みの下、温室効果ガス削減が推進される今、脱炭素の選択肢としての原子力発電の存在感は大きなものがあります。

東京電力福島第一原子力発電所の事故後は、安全性向上への議論と検証を重ね、技術開発に努める一方、再生可能エネルギーとの共存も進められています。また、核燃料サイクル、使用済み燃料対策など、向き合わなければならない課題も山積しています。さらに世界における原子力技術の潮流に目を転ずれば、小型モジュール炉(SMR)に代表される新しい原子炉や、医療に特化した(放射線や放射性物質を用いた検査・治療)開発など、さまざまな可能性に挑むイノベーションが興っており、著名な起業家やベンチャー企業が参入するなど注目を集めています。

原子力分野は社会貢献を果たせると同時に、学びと研究の成果、知見、発想や独創性を発揮できるフィールドであり、そこで活躍する若き可能性を育む場がANECです。学生さんをはじめ多くの方に興味を持っていただきたいと願っています。

解決が待たれる課題に向き合う
原子力人材の育成を。

文部科学省
研究開発局 原子力課

原子力関連技術は、わが国が2050年までの達成を掲げている「カーボンニュートラル」の実現に大きく貢献することが期待されていますが、高い安全を確保し、社会から受け入れられるためには多くの課題があり、さまざまな困難に向き合うことのできる優れた人材の育成が急務となっています。一方、我が国の原子力人材育成の現状については、教員数や試験研究炉の減少等、厳しい現実に直面しています。文部科学省では「国際原子力人材育成イニシアティブ事業」として、基盤的な教育機能を相互補完するコンソーシアムの形成を支援しています。

ANECでは、大学、研究機関を始め、企業なども含めた多くの組織・機関が議論を重ね、協力して事業を展開する体制が整えられています。原子力関連分野、またそれ以外の分野領域で学ぶ学生さんにとっても、多様な興味と知的好奇心に応える教育コンテンツが提供・共有されます。次代を担う多くの学生さんの参加を願っています。