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  • 実習体験インタビューPractical Training Experience Interview
  • 実験原子力総合実習

  • 2023年1月23日~27日
    東北大学
  • 鈴木 皓士さん
  • 東北大学大学院工学研究科
    量子エネルギー工学専攻
    修士課程前期1年

実験原子力総合実習は、東北大学で2023年1月23日~27日の5日間にわたって開催されました。

加速器を用いた中性子計測・材料分析実習、原子炉材料照射実習に加えて、
原子炉システムや熱流動のシミュレーション実習を行いました。

研究テーマは、医用画像解析ソフトウェア開発。
医学と工学を架橋する取り組み。

 「放射線」とは、アルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線など高い運動エネルギーを持つ荷電粒子と、ガンマ線と X 線といった高エネルギーの電磁波の総称です。改めて見渡せば、社会や暮らしのさまざまな場所で利活用されています。例えば、よく知られているところでは X 線検査(レントゲン検査)やCTスキャン。医療の診断に用いられているだけでなく、構造物内部の欠陥や劣化を調べる非破壊検査は、社会資本の安全・信頼性の向上に役立てられています。他にもタイヤ(ゴム)やプラスチックの強度向上、農業分野(ジャガイモの芽止め、品種改良)、医療用器具の滅菌、さらには遺跡や岩石の年代測定などにも使われます。また、医療の面でも診断後に行われる治療においても、がんなどに対する放射線治療が標準治療として行われています。

 私の研究テーマはX 線 CT 画像などの医用画像技術に関するものです。これらは現代医療を支える重要ツールの一つですが、その有効性は医療従事者の経験や能力に依拠する面も多くあります。そもそも濃淡(白黒)のみで表現される X 線透視画像を読み解くには、高い技術や経験を要します。私は、医用画像の観察(読影)や解析をサポートするソフトウェアの研究・開発に取り組んでおり、画像の特定と評価の精度を向上させることを目指しています。「医学・医療」と「工学・技術」が切っても切り離せない密接な関係にあることは、多くの医療器械を見ても明らかです。現代医療の進展、その一端を担える研究に取り組めていることに誇りを持っています。

ダイナミックで複雑な原子炉の挙動を模擬。
机上の学びを、確かな知識の像として結ぶ。

 私の研究テーマは、放射線の医療活用、それもソフトウェアからのアプローチですが、機会あればもっと視野を広げてみたいと考えていました。そんな折、研究室の先生から参加を勧められたのが「実験原子力総合実習」です。

 実習メニューの一つ、原子炉のシステムシミュレーション(PCTRAN)ならびに原子炉の熱流動シミュレーション(RETRAN)は、装置を使ってさまざまな挙動を模擬するもので、ダイナミックで複雑な振る舞いに満ちる原子炉の全体像の把握することができます。実際の原子炉では絶対に起こすことのできないヒューマンエラー(ヒヤリハット事例)や過渡変化をシミュレートし、解析コードによってリスクを評価したり、プラントの制御やその動作理解につなげたりする点は、とても興味深く思いました。また、原子力とは、物理学を始め、機械工学、電気工学、材料工学、土木建築学、情報処理学ほか多くの分野・領域から構成される「総合先端工学」であることを改めて認識することができ、学部生の時に机上で学んだことがはっきりとした知識の像として結ばれました。高い信頼性と安全性を追求していくためには、横断的な連携なしには成り立たないことを深く理解できました。

国内外の学生と交流しながら、経験と知識を積み上げ、
自身の研究に生かしてほしい。

 本実習は全国の大学院生、学部生、高等専門学校生に開かれています。私が参加したのは新型コロナウイルス感染症への対応が求められていた時期であり、グループワークなどはありませんでしたが、対面での実習ができたことは幸運でした。厳しい状況下にもかかわらず、感染対策を講じながら開講してくださった先生方に心から感謝したいと思います。留学生の参加もあり、英語で意思疎通を図る場面もありましたが、自分で納得のいくコミュニケーションができず、もっと英語力を向上させなくては、とモチベーションが上がりました。

 実習メニューのなかには、中性子を検出・測定する実験がありました。中性子は加速器を用いて発生させていました。加速器のよう大型の装置を保有している大学はあまり多くなく、本事業(国際原子力人材育成イニシアティブ事業 :ANEC)が各拠点で開催する実習を通じて、多様な装置を見聞、体験することができます。これは得難い機会なのではないでしょうか。

 私は、今回の実習を通じて、「研究室で集中することも大切だけど、閉じこもっていては気付かないことが多い」と思い至りました。もっと多くの学生に、本事業を通じて経験知を積み上げ、集った仲間たちと交流し、新しい知識によって自身の研究に新しい風を取り入れてほしいと願っています。

今回実習したカリキュラム

東北大学 実験原子力総合実習

分類

B

開催日

2023年1月23日~27日

募集期間

募集中

定員

8名程度

開催機関

東北大学

対象

大学院生、大学生、高専生

目的・概要

実習内容は備考欄に記載

備考

本実習は、以下のテーマから構成される。
①中性子輸送挙動計測実習
高速中性子実験室の4.5MVダイナミトロン加速器による加速器中性子源を用いて、様々な材料中での中性子の挙動を理解するための実習を行う。
②放射線応用実習
放射線高度利用について学ぶことを目的として、高速中性子実験室の4.5MVダイナミトロン加速器を用いたイメージングの基礎実習を行う。また、臨界未満実験装置室の1MV重イオン加速器を用いたイオンビームによる材料分析実習を行う。
③原子炉材料照射実習
臨界未満実験装置室の1MV重イオン加速器を用いた、金属材料の組織と強度に関する実習を行う。具体的には、金属材料の組織制御と強度について理解した上で、材料の機械特性に及ぼすイオン照射の影響について学習する内容とする。

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