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  • 実習体験インタビューPractical Training Experience Interview
  • 実験原子力
    インターンシップ

  • 2023年8月21日~25日
    東北大学
  • 淺川 大洋さん
  • 秋田工業高等専門学校 専攻科
    グローバル地域創生工学専攻
    機械系知能機械コース2年

実験原子力インターンシップは、全国の高専生を対象として、東北大学で2023年8月21日~25日の5日間にわたって開催されました。
機械・電気・材料分野をベースとした講義に加え、当専攻の保有する大型実験設備群などのリソースを最大限に活用したデモ実験を通じた実習を行いました。
高専生の皆さんの進路選択の一助となるよう、高専出身者との懇談や、研究室ツアーも実施しました。

理系志向+ものづくりに興味、
高専への進学を選択。

 多くの人は学童期(小学生)になると、得意なことや興味のある分野がより明確になってくるそうですが、私は手や道具を使って形のあるものを生み出す「ものづくり」が好きでプラモデルや電子工作キットに夢中になっていました。中学卒業後の進学先として高等専門学校(以下、高専)を選択したのも、理系であったこと、またものづくりに関連した学びや研究を深められるのではと思ったからです。“高専人材”は、即戦力として人気があり、企業からの要請も高いようですが、当時はそうした「社会への出口」を意識したわけではありませんでした。

 高専では5年間の本科を終えると、就職、あるいは専攻科へ進学することになります。私は、バイオメカニクスの知見と技術を活用して(主に高齢者の自立支援に向けた)福祉機器を研究・開発している宮脇和人研究室に進みました。ここでも決め手となったのは、数値解析やシミュレーションだけではなく、実際にプロトタイプや実機がつくれるという点でした。

 加齢に伴う身体機能の低下を補助する器具として車輪型歩行器があります。高齢者の行動範囲を広げ、また心身の活力(筋力・認知機能・社会性など)の衰えを予防するために積極的な使用が推奨されていますが、降雪地帯では冬期間の利用に困難を来します。まさに秋田が抱える課題です。私は、地面との接触部にソリを取り付けるというアイデアで、雪上での利用を模索しています。三次元動作解析での評価をフィードバックしながら、関節にかかるモーメントを減らすため、クローラロボットを搭載し、電子制御により個々の歩行に適した補助を行うなどのアプローチを試みています。

実習は驚きの連続。
研究の最前線に触れた貴重な体験。

 専攻科では、企業や研究機関などで業務を体験する実習プログラム、いわゆるインターンが必修になっています。野澤正和先生(機械系・機械システムコース准教授)から勧められたのが、東北大学で開催される「実験原子力インターンシップ」です。畑違いではあるけれども、よい経験になるかもしれないと考え、参加を決めました。旅費や宿泊費の負担がない点もハードルを下げてくれました。

 実験原子力インターンシップでは、たくさんの新鮮な驚きや発見がありました。まず講義ですが、高専では教科書の枠内でしっかりと知識を養うことに重きが置かれています。本実習の講義では、技術や研究成果が社会生活にどう生かされているのかといった身近な例、また世界情勢、社会ニーズ、将来像など視野が広がるようなダイナミックな話もあり、興味が尽きませんでした。

 実験では、ダイナミトロン加速器を実際に操作させてもらえたことに驚いたのですが、さらには学生が中心となって実験や保守・修理にもかかわっていると聞き、主体的な研究活動の姿を目の当たりにしました。研究室見学もありましたが、どの研究テーマも面白そうで、(私の興味の要である)ものづくりとの親和性が高い領域も多くあり、東北大学大学院工学研究科の量子エネルギー工学専攻の多彩で高度な研究フィールドに圧倒されました。扱っているエネルギーのオーダー、規模感にはロマンを感じたといっても過言ではありません。

実習が導いた進学の道、
原子力への新しい視点。

 実験原子力インターンシップでは、高専から大学院に進学した先輩との座談会もあり、そこで研究室の雰囲気、学生生活(費用などもを含めて)、修了後の進路などをうかがうこともできました。その話を通じて、親元を離れて一人暮らしをするイメージが持てました。実は、専攻科修了後に大学院に進むことは早い時期から視野に入れており、専攻科1年の夏休みに中国地方の大学(機械系ロボティクス)を訪問したりもしたのですが、本実習を経て、東北大学大学院工学研究科の量子エネルギー工学専攻への進学を決めました。

 原子力と聞くと、エネルギー資源(発電)としての活用を思い浮かべる方も多いかと思いますが、ほかにも医療、農業、工業分野での産業応用がなされています。私は東日本大震災の影響もあり、原子力にあまり良い印象がありませんでした。しかし、実習後は「知識がなかった」「知らなかった」ことが怖さや忌避感を助長していたのだと理解しました。これからは私が学びにより知り得た正しい情報や知識体系を、まずは周囲の人たちに少しずつ伝えていけたらと考えています。

 高専では、バンド活動(キーボード、ギター担当)にも力を入れました。仙台でも続けていきたいと思っていますが、まずは自分が取り組みたいと願った研究に全力投球。研究者としてさらに挑戦、研鑽を積んでいきたいというテーマとの出会いがあれば、博士後期課程(博士課程)へのステップアップも見据えていきたいと考えています。

今回実習したカリキュラム

東北大学  実験原子力インターンシップ

分類

B

開催日

2023年8月21日~25日

募集期間

今年度終了

定員

8名程度

開催機関

東北大学 

対象

高専生

目的・概要

機械系、電気系の高専生を主たる対象として、自分の専門となじみの少ない原子力分野とのつながりを知ってもらい、原子力分野の魅力に気づいてもらえるよう、「材料の基礎」から入り、「1 MV重イオン加速器を用いた材料の照射による変化の観察」、「4.5 MVダイナミトロン加速器を用いた運転実習と放射線の応用」を組み合わせた実習と原子力系研究室の見学を行う。

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